進路指導を通じて(英語を生かして…)【上】
1. はじめに
(以下の文章は、関西帰国子女親の会「かけはし」の会報に掲載されたものをもとに、加筆・修正したものです。)
enaデトロイト校長、金森陽一です。日本で1年、シカゴで8年、デトロイト及びiBTの責任者として5年、小1~高3の帰国子女の指導に携わって きました。この間、毎年、多数の受験指導・面談を行ってきました。今回は、春の面談シーズンを控え、毎年の進路指導を通じて感じていることをまとめたいと 思います。enaのホームページをご覧の方に、少しでもお役に立てれば幸いです。私がアメリカ中西部在住ということで、「英語圏」で「現地校」に通う生徒 の話が中心になりますことをご了承ください。
2.「英語を生かして・・・」
進路を決定するとき、現在の学力等の状況をもとに、その学力で進学可能な学校を選んでいく方法と、将来やりたいことをもとに、それを実現できる学校 を選んでいく方法の2つがあります。現実的には、その2つを組み合わせて決定していくことになるのですが、個人的には後者の選び方が理想だと思います。そ うやって進路を決めた生徒の方が、その後、学力的にも伸びるケースが多いからです。
そこで、「将来、どんな仕事がしたいの?」と生徒に尋ねると、よくあるのが「英語を生かして・・・」という答えです。英語を生かして「どんなことをしたいのか」、の方が大切だと思うのですが、その部分はモヤモヤしています。そしてそれ以前に大問題なのが、「生かす」ほどの英語が身についていない生徒が多いことです。
3.「英語圏からの帰国生に求められている英語力」
では、どれぐらいの英語力がついていれば、英語を「生かして」いけるのでしょうか。まず、当面の課題である帰国生入試について見ると、(学校差が大 きいのですが、人気のある上位校を中心に見ていきます。)中学入試では、最低でも英検2級レベル。英検準1級レベルを要求する学校も少なくありません。 (首都圏の一部の学校にはできれば英検1級という学校もあります。)作文のある学校では、学年相応の語彙を使い、短時間にかなりの長文を書く能力が求めら れています。高校入試では、英検準1級またはTOEFL80点程度。作文のある学校では、きちんとしたルールに則ったエッセイが書ける能力が求められま す。大学入試ではTOEFL100点、SAT1800点程度(数学が満点だとしても英語で1600点中1000点)が欲しいところです。もちろん、これよ り要求が低い学校も多くありますが、一般的な「帰国生」に対する期待がこの程度のものである以上、将来、「英語を生かし」た仕事をしたいと考えているのな ら、在米中にこのレベルを目指すべきでしょう。
面白いことに、このレベルを楽々クリアしている生徒は、面談で、あまり「英語を生かして」とは言いません。それよりも、現地校の授業で興味を持った ものや、自分の適性を考えた具体的な職種・学部をあげることが多いのです。例えば、enaデトロイトから東大文3に進んだTさんの場合、私の面談記録シー トの最初の記録には、「私は、ホスピタリティに興味がある。職種としては、ホテル等。ホスピタリティを専攻できる大学は、アメリカではA大とB大。このう ち、第三者機関による評価ではA大の方がレベルが高いけれど、見学した感じでは小規模なB大の方が本当に学びたいことを学べそう。」というメモが残ってい ます。ちなみにTさんは、この後、TOEFLを受けに行ったところ、初回で112点。SATも2000点を超えていたので、米大の他に東大も受験すること をアドバイスしたところ、見事文3に合格。A大・B大(どちらも国際的評価は東大よりも上位)からも合格をもらっていたのですが、最終的に東大進学後、街 づくりに興味をもったTさんは、3年生に進級するときに工学部の社会基盤学科にまさかの理転!Tさんらしいなあ、とびっくりしながらも、やりたいことに全 力にすすんでいる近況報告は大変嬉しいものでした。話がそれましたが、Tさんに限らず、本当に「生かせる」英語力を持った人は、英語はツールの1つである ことがわかっているせいか、あまり「英語を生かして」と言わないのです。
また、将来的に見ても、日常会話や雑談が流暢に出来ても、それがそのまま「英語を生かす」ことにはつながらないことは明らかです。論理的に、内容のある話ができ、文法的に誤りのない適切な文体で文章が書けること。そして、それを正しい日本語でも表現できる能力がなければ、日本をベースとした仕事で英語を「生かす」ことは難しいと言えます。
○月別アーカイブ
- ≫2024年11月
- ≫2024年10月
- ≫2024年9月
- ≫2024年8月
- ≫2024年7月
- ≫2024年6月
- ≫2024年5月
- ≫2024年4月
- ≫2024年3月
- ≫2024年2月
- ≫2024年1月
- ≫2023年12月
- ≫2023年11月
- ≫2023年10月
- ≫2023年9月
- ≫2023年8月
- ≫2023年7月
- ≫2023年6月
- ≫2023年5月
- ≫2023年4月
- ≫2023年3月
- ≫2023年2月
- ≫2023年1月
- ≫2022年12月
- ≫2022年11月
- ≫2022年10月
- ≫2022年9月
- ≫2022年8月
- ≫2022年7月
- ≫2022年6月
- ≫2022年5月
- ≫2022年4月
- ≫2022年3月
- ≫2022年2月
- ≫2022年1月
- ≫2021年12月
- ≫2021年11月
- ≫2021年10月
- ≫2021年9月
- ≫2021年8月
- ≫2021年7月
- ≫2021年6月
- ≫2021年5月
- ≫2021年4月
- ≫2021年3月
- ≫2021年2月
- ≫2021年1月
- ≫2020年12月
- ≫2020年11月
- ≫2020年10月
- ≫2020年9月
- ≫2020年8月
- ≫2020年7月
- ≫2020年6月
- ≫2020年5月
- ≫2020年4月
- ≫2020年3月
- ≫2020年2月
- ≫2020年1月
- ≫2019年12月
- ≫2019年11月
- ≫2019年10月
- ≫2019年9月
- ≫2019年8月
- ≫2019年7月
- ≫2019年6月
- ≫2019年5月
- ≫2019年4月
- ≫2019年3月
- ≫2019年2月
- ≫2019年1月
- ≫2018年12月
- ≫2018年11月
- ≫2018年10月
- ≫2018年9月
- ≫2018年8月
- ≫2018年7月
- ≫2018年6月
- ≫2018年5月
- ≫2018年4月
- ≫2018年3月
- ≫2018年2月
- ≫2018年1月
- ≫2017年12月
- ≫2017年11月
- ≫2017年10月
- ≫2017年9月
- ≫2017年8月
- ≫2017年7月
- ≫2017年6月
- ≫2017年5月
- ≫2017年4月
- ≫2017年3月
- ≫2017年2月
- ≫2017年1月
- ≫2016年12月
- ≫2016年11月
- ≫2016年10月
- ≫2016年9月
- ≫2016年8月
- ≫2016年7月
- ≫2016年6月
- ≫2016年5月
- ≫2016年4月
- ≫2016年3月
- ≫2016年2月
- ≫2016年1月
- ≫2015年12月
- ≫2015年11月
- ≫2015年10月
- ≫2015年9月
- ≫2015年8月
- ≫2015年7月
- ≫2015年6月
- ≫2015年5月
- ≫2015年4月
- ≫2015年3月
- ≫2015年2月
- ≫2015年1月
- ≫2014年12月
- ≫2014年11月
- ≫2014年10月
- ≫2014年9月
- ≫2014年8月
- ≫2014年7月
- ≫2014年6月
- ≫2014年5月
- ≫2014年4月
- ≫2014年3月
- ≫2014年2月
- ≫2014年1月
- ≫2013年12月
- ≫2013年11月
- ≫2013年10月
- ≫2013年9月
- ≫2013年8月
- ≫2013年7月
- ≫2013年6月
- ≫2013年5月
- ≫2013年4月
- ≫2013年3月
- ≫2013年2月
- ≫2013年1月
- ≫2012年12月
- ≫2012年10月
- ≫2012年9月
- ≫2012年8月
- ≫2012年7月
- ≫2012年6月
- ≫2012年5月
- ≫2012年4月
- ≫2011年11月
- ≫2011年7月
- ≫2011年6月
- ≫2011年5月
- ≫2011年2月
- ≫2010年6月
- ≫2009年6月
- ≫2008年6月
- ≫2007年6月
- ≫2006年6月