夏の怪談
昨晩、最後の授業の合間にプリントを取りにデスクに行った際に、頭上から「ブブブ・・・」と、耳慣れない音が。
ふと顔を上げると、そこには奇怪な宇宙生物のような奴が、天井の電気に頭を打ちつけていた。
「月田せんせー!!!何かいますー!!!!」
私のただならぬ悲鳴を聞き、月田先生が駆けつけ、私の視線の先を見て一言。
「あー、セミですね。」
セミだ。あいつはただのセミだ。と、自分に言い聞かせ、教室に戻り、授業続行。
授業終了後、デスクに戻ると、あいつは相変わらず天井の電気に頭を打ちつけながら、威嚇するかのように時々不定期に低空飛行している。ゆるせん。
「月田せんせー・・・、なんであいつはあんな変な飛び方するんですか~?」
「明るいところ目指して飛ぶからですよ~。」
「月田せんせー、あいつ、ものすごく巨大なんですけれど、何なんですか~!!??」
「いやー、セミだからでしょ。」
あんなに奇怪な奴が同じ室内にいるのに、いつもの優しい笑顔とソフトな口調で受け答えする月田先生。
月田先生は、あいつの仲間なんじゃないだろうか?きっとそうだ。あいつを室内に招き入れたのも月田先生か!?
一日の疲れと、セミへの恐怖心があいまって、いつしか月田先生への理不尽な怒りの感情に。
結局、最後は月田先生が、あいつを退治してくれました。
あんな恐ろしい奴の襲撃にあった怖いエピソード紹介ということで「夏の怪談」というタイトルをつけたのですが、自分の打った文章を読み返してみると、
生徒の帰った後の静かな夜の校舎。室内を飛び交う黒いあいつと、理不尽な怒りの矛先を向け、鼻息荒く自分をにらみ続けてくる二瓶。
月田先生にとって恐ろしかったのは、あいつより私だったのでは?
よく、生徒から「二瓶先生と月田先生、校舎で二人のときって何しているんですか?」という質問をもらいます。
こんなことしています。
シカゴ校 二瓶 由希子
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