小論文上達のためには何をすれば?
上のような質問に一般的な正解を言えば、「沢山書けば上手くなる」となるのが普通でしょうか。
今回はこのことについて考えてみました。
上手い小論文だと感じさせるものには実は2つの特徴があります。
1つは与えられているお題の周辺説明よりもいわゆる思想を中心に書いてあるかどうかです。言い換えれば、お題に対して自分の設定した視点から思考した道筋をしっかり説明することです。これが出来ているかが、その小論文の出来の大部分を決めてしまいます。わかりやすい例を挙げるなら、例えば「佐世保女子高生によるバラバラ殺人事件についてあなたが考えるところを述べよ。」と言った問いがあったとします。それに対し、事件のあらましをただ長く書いてあるだけとなってしまうのがいわゆる失敗例です。そうではなく、こうした事件の起こる社会的要因、その要因の構造、その要因が引き起こす別のマイナス、それらに対しての解決の方向性と言った形などをしっかり書いてあるかどうかということです。
そしてもう1つはそれが効果的と感じられる書き方、言い回しで書かれているかどうかです。これはどういうことかと言うと、よく小学生の作文指導をしている時に感じることなのですが、話の上手い生徒がとても上手く書けるというのに似ています。もちろんこれは作文レベルでのことではありますが、意外と侮れない事実です。高校生に小論文を教えるときも随筆ではありますが朝日新聞の天声人語をいわゆる「口の上手い文章」としてよく持ち出します。それだけではもちろん駄目ですが、「文章の流れや言い回しが上手い=説得力がある」という図式はなくもなく、特に小論文ではタブー視されがちな情緒的な表現も上手に使ってあれば文章の説得力をものすごく上げてくれます。しっかり論理性を持った展開で全体をまとめ、最後にやや情緒的な表現を使ってあるとすごいと思わせる小論文になることが多いです。この辺りは文章を書く際のリズム感のようなところがあるので、天声人語の音読等をしていくと文章を書くセンスとして身についていくところがあります。
自分の授業では、だいたい4回ぐらいの授業を1セットにして一つのお題を教えていきます。各回毎に原稿用紙を渡して、一応、1回目、2回目などその過程でそれぞれ小論文を提出してもらうようにしています。だから生徒によっては合計で4回、完全に違う視点での小論文を作ることもあります。
そこでやはり当然のことですが、各回全て提出し、なおかつ始めに提出したものとは別の新たな視点のものが書けたという生徒が一番伸びていきます。授業では生徒それぞれが問題に対する視点を決定して論理展開していくためのヒントとなる知識や考え方を、各回いくつかの別のアプローチで解説していきます。だからその流れに乗って、より多面的に思考し、しっかり文章に表現することが、やはり一番の上達のコツです。
今回は小論文についての話題、第1弾という形で以上のことを取り上げてみました。
小論文という教科は、特にバイリンガルであるべき帰国生にとって非常に有用な表現能力を与えてくれるチャンスとなるものです。
頑張っていきましょう。
ena ロサンゼルス校 小論文担当講師 宮地
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